先日、視覚障害や発達障害、上肢の障害などがある人の読書環境を整える読書バリアフリー法が衆院本会議で可決、成立しました。

点字図書や音声読み上げに対応した電子書籍の導入といった読書環境の整備を国や地方自治体の責務と定めました。

文字を読むことに困難を感じる人への支援の動きが、日本でもようやく目に見える形で加速してきましたが、法案成立より一足早く既に動き始めた自治体もあります。

奈良県の生駒市教育委員会は、文字の形がわかりやすく、読み間違えにくい書体「UD(ユニバーサルデザイン)フォント」を市内の全小中学校に導入し、学習意欲と学力の向上を目指しています。

弱視や学習障害の子供に読みやすい他、小学校での実証実験で多くの子が正確に速く読める効果があることもわかりました。

すべての生徒にとって学習達成感を感じられる結果となっています。

教科書で使われる「教科書体」という書体は、筆書きの楷書で、線の太さに強弱があります。

一方、線が太い「ゴシック体」は字の形が教科書と異なり、教育現場には適しません。

これに対し、UDフォントの「UDデジタル教科書体」だと、教科書体よりも線が太く、ゴシック体のように太さがほぼ一定になっていて、教科書体とゴシック体のそれぞれの欠点を補っています。

視覚過敏のある子供たちの中には、従来の教科書体のハライやハネの鋭さが怖かったり、明朝体の横線に付いている三角形のウロコや、教科書体の筆をぐっと押し付けたような筆の入りの形状が気になって文字を読めなかったり、書体形状からくるストレスで教科書を開くことさえ嫌な子供もいるそうです。

UDデジタル教科書体で文字を読んで、「これなら読める!オレはバカじゃなかったんだ・・・」と学習障害(LD)の子供が絞り出すような声で言ったというエピソードもあり、読みやすい書体を選択することの重要性を示しています。

書体の開発会社の協力で、同社が販売する43種類の書体を、市内の小学校12校、中学校8校の教員用パソコンで使えるようにしました。

学習教材や連絡用の配布物等に活用するのが目的です。

UDフォントはすべての生徒に読みやすいことから、個における合理的配慮という面だけではなく、学校生活における基礎的環境を整えるという観点においても非常に有効です。

しかし、これもあくまで合理的配慮のスタートであってゴールではないということを忘れてはいけません。

つまり、読みやすい書体を選択することは重要な第一歩ではありますが、大切なのはその書体を活かすような十分な配慮が行われることなのです。

生駒市のような動きが、読書バリアフリー法の成立で、なお一層加速していくことが期待されます。

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