自閉症スペクトラムの特性の一つに強いこだわりがあります。
自分の関心ややり方、ペースを維持することを最優先したいという志向が強く見られ、いつも同じでないと気が済まないという傾向があり、食事の場面でもそれが見られることがよくあります。
知覚過敏が伴うことが多いこともあり、苦手な物が食べられない、いわゆる偏食という形をとることが多いようですが、中には食事の内容や食事の材料、食器の位置、食べる順序などにこだわりがあり、自分のルールに執着するケースも見受けられます。
たとえば、それぞれの皿の中のおかずの具の数にこだわり、すべての皿の中が同時に空になるように交互に食べることに執着したりします。
そこには感覚的な問題も多く、ルールには大きな理由もないことが多いのが特徴です。
パターン的行動に囚われ、生真面目で融通が利かないという見方もできますが、本人からすると譲れない部分であり、簡単には変えることができない習慣なのです。
そうしたルールは本人にとっては理想の形であり、食事中は「そうありたい」ということを常に考え続けているため、会話しながら食べることもできませんし、ルールを守ることに忠実にこだわるため、食事が終わるまでには相当長い時間がかかってしまいます。
そのため、友人と一緒に食事してもお互い楽しめないのではないかと気にして、せっかくの誘いを断ってしまう場合もあるようです。
たしかに、大人になって就職したときに、決められた休憩時間内に食事を終えることができないと困るので、ある程度時間を意識するような習慣は徐々に身に着けていく必要があるかと思いますが、プライベートの親しい友人との食事であれば、そこまでナーバスになることもないのではないでしょうか。
昔、自閉症スペクトラムではなかったと思うのですが、同僚で一品ずつおかずを片付けていく方法でしか食べられない人がいました。
でも「少し変わってるね」くらいで、誰も特に気に留めることはありませんでした。
本人が深刻に悩むほどには周囲は案外気にしていなかったりします。
最初に、「私はこういう食べ方なの」と思い切って言ってしまえば、周囲も余程のことがない限り受け容れてくれるのではないでしょうか。
自閉症スペクトラムに限らず、発達障害のお子さんは、小さい頃から人と違う点をあれこれ指摘されたり注意されたりするため、多かれ少なかれ自尊感情が傷ついてしまっていることが多いようです。
元々否定的な言動に対して敏感であり、嫌な出来事から切り替えるのが苦手でトラウマになりやすい傾向があります。
公共の場面などで他人に迷惑になってしまうような場合は注意が必要ですが、親しい人とのプライベートな場面では、もっと自分らしく過ごしてもいいのではないかと思います。
周囲も、「こうしてみたら?」というアドバイスはしたとしても、むやみに否定したり、無理に一般的なやり方を押し付けたりしないことが大事です。
ただ、「自分らしく」と口で言うのはたやすいですが、みんなと同じことをよしとする日本の学校の教育ではなかなか難しいことも多いかと思います。
子供たちの多様性を認め、自閉症スペクトラムなどの発達障害に関する理解やサポートが進んでいる海外のボーディングスクールへの留学なども考えてみると、世界が広がるきっかけになります。
子供たちには、自分らしく人生を楽しむ方法を見つけてもらいたいものです。