引きこもりには家庭内暴力が伴うケースがあります。
ある専門家によると、引きこもりのうち、10%弱のケースに慢性的な暴力が伴い、50%程度に一過性の暴力が伴うそうです。
残念ながら暴力と引きこもりは親和性が高いと言わざるを得ないのですが、これは外向きではなく内向きの攻撃性であり、家で暴れているからと言って通り魔になることはありません。
ただ、犯罪率は低いのですが、引きこもりで家庭内暴力が起きる環境になりやすいのは事実です。
背景としては、家族が本人の人格を否定したり、怠け者扱いしたり、早く仕事をするように迫ったりすることで、本人が追い詰められ、反発として暴力が起こるという構図があります。
家族に、本人に対する暴言や批判、否定をやめてもらい、本人の話をちゃんと聞くようにすることで、暴力が収まるケースもかなりあるそうです。
一方で、刺激しなくても起こる慢性型の暴力は対処が難しいと言います。
長く密室的な親子関係が続くことで、本人は自分の人生に対して否定的になり、その思いを一人で引き受けることができず、他責的になって親にぶつけてしまうというというのが慢性型の暴力の根源です。
これは「怒り」というより「悲しみ」であり、決して暴力を振るってすっきりするわけではなく、振るった自分を責めているのですが、それでも振るわずにはいられない。
暴力を振るっても振るわなくてもつらいという悪循環なのです。
更に暴れる理由には、自分の苦しさを味わってほしい、共感してほしいという意味もあり、暴力は半ば衝動的にやっている感があります。
根源にあるのは悲しみで、それをわかってほしいという思いがあることは踏まえておく必要があります。
具体的には、まずは恨みつらみも含めて本人の言葉、訴えにしっかりと耳を傾けることが大事です。
その際には一切反論や弁解をせずに、ひたすら聞くという姿勢で、本人の言葉を全部受け止めるという作業が必要になります。
ただ、聞くと言っても言いなりになるということではなく、要求をのむ必要はまったくありません。
一番やってはいけないのは、暴力を受け入れることです。
お子さんからの暴力に対しても、毅然として拒否をする必要があります。
しかし、親御さんは苦しんでいるお子さんに対して罪悪感があることなどから、なかなか拒否することは難しいものです。
話をきちんと聞いてあげてもなお暴力が続く場合は、覚悟を決めて、通報や避難などの方法をとる必要がありますが、その場合も手順などに注意してください。
具体的には、また別の機会に書ければと思いますが、暴力から身を守りつつも、まずはお子さんの気持ちに寄り添う姿勢をとることが重要になるかと思います。
それでもなお、家庭内での解決が難しいようでしたら、抱え込まず、第三者の力を借りることを考えましょう。
それは決して恥ずかしいことではなく、正当かつ有効な手段です。