靴ひもが上手に結べなかったり、つまずく物がないのによく転んだり、並外れて不器用、もしくは極端に運動が苦手な子供が、小学校のクラスに数人はいます。

これまでは、過保護な育て方や運動不足、練習不足が原因だと思われることが多かったのですが、実は発達障害の一つである発達性協調運動障害(DCD)である可能性があることがわかってきました。

DCDの子供は、ミルクを飲むときにむせやすかったり、寝返りが上手くできなかったり、乳児の頃から兆候が現れてきます。

幼児期になると、階段の昇り降りが苦手、ハサミが上手く使えない、着替えが苦手、など、さまざまな形で症状が現れます。

DCDの頻度は6~10%と高く、ADHDの約30~50%、LDの約50%に見られ、自閉症スペクトラム障害と併存することも多くあります。

DCDは個々の身体機能に問題がないにもかかわらず、脳が運動をコーディネートできない障害と考えられます。

床にボールを弾ませたり、片足でバランスを取ったりというようなごく簡単な運動においても、その不器用さは現れ、親や教師がふざけているのではないかと誤解するほど理解できない動きをすることがあります。

何気ない運動でも、スムーズに正確にこなすためには、目で空間的な位置を確認し、自分の体と対象との距離を測ったり、目と手足を連動して動かしたり、体のバランスを取ったり、力の入れ具合を調節したり、動くタイミングを計ったりといった、さまざまなレベルの情報を統合し、運動に結び付ける必要がありますが、DCDの子供は真剣に努力してもそれがどうしても難しいのです。

この不器用さを脳の機能障害と理解している人は少ないため、周囲からの支援は受けにくいばかりか、反復練習を強いる指導など、保護者や教師から間違った対応がなされて、事態が悪化するケースもあります。

本人は真剣に努力しているのに、適切なサポートや合理的配慮が行われず、挫折感や屈辱感を与えるような訓練が繰り返されることで、大きな心の負担となり、自尊感情が大きく損なわれるという問題が発生します。

最悪の場合は、虐待やいじめ、体罰のターゲットになり、二次的な精神障害まで負うことにもなりかねません。

DCDの子供たちは自然に上達していくのは難しいので、大人が適切に介入していく必要があります。

基本的には、本人のやりたいこと、できるようになりたいことを尊重し、具体的なアドバイスやサポートによって手助けします。

本人は必死に取り組んでいるので、できなくても「やる気がない」などと責めるのはやめましょう。

他の子供と比較されることなく、「ここでは下手でもいいのだ」とわかる場所であれば、DCDの子供も安心して運動にチャレンジできます。

どんなに運動が下手でも、体を動かすことが嫌いな子供はいません。

近年、運動療法が、社会性の障害や、実行機能の障害、学習能力などを改善することが明らかになってきました。

苦手だから運動しない、運動しないから障害が改善されないという悪循環にならないように、周囲も気をつけて環境を整えてあげることが重要です。

子供が不器用、運動音痴というだけで医療機関を受診する保護者は少ないため、DCDは受診から療育まで繋がりにくいことも多いようです。

しかし、不器用さや運動ができないことは本人にとっては大変なプレッシャーになります。

体育で悪い見本として晒され、自尊心を深く傷つけられる子供もいます。

できればそういうことが起こる前に、DCDの可能性を見つけて、専門の医療機関を受診し、適切な療育に繋げることができれば、お子さんの負担も軽くなると思います。

発達障害の場合でも、ゆっくりであったり、道筋はいろいろだったりしますが、苦手なこともちゃんと発達していきます。

きちんとした評価に基づき、それぞれに合わせた療育や支援の方法を見つけ、一緒に取り組んであげることが大切です。

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