以前ディスレクシア(読み書き障害)に関する記事で、デイジー教科書を認めない学校が多く、なかなか支援が進んでいないということをお伝えしましたが、その一方で、合理的配慮を行い始める学校も出てきました。

合理的配慮とは、平成28年に施行された障害者差別解消法で、行政機関等や事業者に対して、障害者から何らかの対応を必要としている意思が伝えられた時に、負担が重すぎない範囲で対応することを求めているものです。

都内のある中学校では、こうした流れを受けて、ディスレクシアの生徒を受け入れる際に、本人、母親、担任の教諭と話し合い、一定の配慮を行っています。

具体的には、テストの解答欄を他の児童より大きくしたり、多少字が間違っていても書こうとしている内容が正しければ正解にしたり、といった対応です。

また、板書やテストの際にパソコンの使用を認めたり、読書の時間に電子辞書の音声読み上げ機能をイヤホンで使用させたり、というように、ICT(情報通信技術)も活用しています。

テストの際にパソコンを使用することにより、これまで字が上手く書けず、読めないために不正解になっていた解答が、内容は正解であったことが判明し、問題を解く力はあるということがわかりました。

字が書けないというだけで勉強ができないという印象を持たれがちなのですが、実は内容は理解できていることも多いのです。

ディスレクシアは発達障害の中の学習障害の一つで、1896年にイギリスで最初の症例が報告されましたが、原因はいまだにわかっていません。

文章を読む時に脳が行う一連の作業に支障があるとみられています。

親や教師など周囲はとにかくできるようにさせようと、漢字などの反復練習を強いてしまいがちですが、本人にとってはこれが苦痛になり、非常にストレスを感じてしまいます。

上記の中学校の校長も、当初は練習すれば上手くなるのではないかという思い込みがあったそうですが、その考えが間違っていることに気づき、本人や保護者と話し合い、考えながら配慮を行っているそうです。

ただ、こうした配慮が他の児童に特別扱いと受け取られ、それがきっかけでいじめが起きる可能性もあるため、本人や保護者の同意を得た上で、周りの生徒たちに症状を伝えてしっかり説明し、配慮が必要なことを予め理解してもらったということです。

配慮するのにも配慮が必要ということで、なかなか難しい問題ではありますが、せっかくの合理的配慮が効果を上げるためには必要なことかと思われます。

日本ではまだディスレクシアの認知度が低いため、字が汚い、勉強不足などと誤解され、自信をなくしたり、諦めたりして不登校になるケースも多いようです。

保護者が早めに障害に気づいて、学校にも理解してもらい、合理的配慮を求めるようにすることが大切です。

学校現場でもまだ合理的配慮が浸透していないところが多く、パソコンの導入などが難しい場合もありますが、プリントのレイアウトを変えたり、テストの問題文を読み上げたり、といったようなことは比較的対応しやすいと思いますので、先生に相談してみるのがよいかと思います。

障害者差別解消法では入試での合理的配慮も求めていますが、学校を通じて受験する学校や教育委員会との調整が必要になるので、実際にどのような配慮が受けられるのかはまだ不透明です。

一方、海外では学習障害を含む発達障害に対する支援の歴史が長く、受け入れ態勢も整っている学校が多くあります。

今通っている学校、通う予定の学校と話し合ってみて、十分な支援を受けられないと感じたときは、海外のボーディングスクールなども検討してみる価値があるかと思います。

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